
はじめに — 是正処置報告書の役割とPマークとの関係
「是正処置報告書(Corrective Action Report)」は、内部監査や点検、顧客からの苦情、事故・ヒヤリハットなどの際に、発生した不適合の原因を分析し、再発防止策を講じるための公式文書です。
プライバシーマーク(Pマーク)運用においては、是正処置の適切な記録と運用が審査で重視されます。
特に、JIS Q 15001(個人情報保護マネジメントシステム)の要求事項(9.2/10.1/10.2)では、不適合の是正と継続的改善の仕組みが明確に求められています。
そのため、「Pマーク 是正処置報告書」は、認証維持や更新審査に欠かせない証跡(エビデンス)といえます。
なぜ是正処置が重要なのか
再発防止の仕組みを作る
是正処置は単なる「修正」ではなく、再発を防ぐ仕組みの構築が目的です。
問題の根本原因を特定し、手順や体制の改善につなげることで、組織全体のリスクを低減します。
信頼性・審査対応の要
Pマークでは、個人情報漏えいや管理不備が企業の信用に直結します。
是正処置報告書は、「改善の記録」=「信頼を証明する資料」として、審査員が必ず確認する重要な文書です。
継続的改善の基盤
内部監査やマネジメントレビューにおいて、是正処置は改善活動の出発点です。
問題を放置せず、改善のサイクル(PDCA)を回すことで、マネジメントシステムの成熟度を高められます。
是正処置報告書の基本構成(テンプレート例)
以下は、Pマーク運用に沿った是正処置報告書の構成例です。
自社の実態や運用ルールに合わせてカスタマイズしましょう。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 管理番号 | CAR-YYYY-NNN(例:CAR-2025-001) | 
| 発生日/報告日 | いつ発生・発見されたか | 
| 発見者/対象部門 | 誰がどの部門で発見したか | 
| 不適合の内容 | 何が、どの基準と比較して不適合なのか(事実ベースで記載) | 
| 影響範囲 | 個人情報が含まれるか、影響顧客数など | 
| 発生原因の分析 | 根本原因を分析(5 Whys/魚骨図など) | 
| 是正処置 | 短期対策と恒久対策に分けて記載 | 
| 実施日・担当者 | 誰がいつ何を実施したか | 
| 効果の確認 | 確認方法、時期、結果を明記 | 
| 添付資料 | 教育記録、改訂版手順書、チェックリストなど | 
| 承認欄 | 管理責任者の署名・確認日 | 
| フォローアップ | 再監査・再確認の予定 | 
不適合を正しく記載するコツ
- 事実ベースで書く
 推測や感情的表現は避け、「いつ・どこで・何が・どの基準と比較して不適合と判断されたか」を明記します。
- 個人情報関連は明示する
 対象となる顧客数やデータ種別などを具体的に記載。
- 「担当者ミス」で終わらせない
 教育不足、手順不備、チェック体制欠如など、仕組み上の原因を掘り下げます。
発生原因の分析手法
1. 5 Whys(なぜを5回繰り返す)
短時間で根本原因にたどり着くシンプルな手法。内部監査でも使いやすい。
2. 魚骨図(特性要因図)
「人」「手順」「設備」「管理」「外部要因」などに分けて、複数要因を可視化。
3. リスク評価
再発の可能性と影響度を定量化し、是正処置の優先順位を判断する際に有効。
是正処置の立案と実施例
短期的な是正措置(応急対応)
- 誤送信メールの回収依頼
- アクセス権の一時停止
- 一時的な業務フロー停止 など
恒久的な是正策(再発防止策)
- 手順書・チェックリストの改訂
- 二重チェック体制の導入
- 社員教育・再教育の実施
- システム設定変更・アクセス制御強化 など
実施責任者・期限・方法を明確にし、教育実施や手順改訂の証跡を添付します。
効果確認の進め方
- 定量的評価:「同様の不適合が3か月間0件であればOK」など明確な基準を設定。
- 確認方法を具体化:監査、抜き取り確認、ログ検証など。
- 効果が不十分なら再分析:原因再特定→追加是正処置の流れを確立。
記入例(Pマーク 是正処置報告書サンプル)
不適合の内容(例)
「委託先A社との契約に関する『委託先一覧表』への登録が漏れており、委託先評価・監督措置が実施されていなかった。」
発生原因(例)
「契約担当者が手順書を確認せず契約締結。根本原因は『契約締結時のチェックリスト未運用』。」
是正処置(例)
「短期:委託先を一覧表に登録し、評価を遡及実施。
恒久:チェックリストの運用を義務化し、法務・総務による二重チェック体制を導入。」
効果確認(例)
「確認日:2025/11/15、確認方法:全契約を再確認し、未登録0件を確認。内部監査で再発防止を確認。」
是正処置報告書の運用ベストプラクティス
- 番号管理と一覧化:CAR番号を付け、電子管理・検索を容易に。
- 軽微な不適合も記録:改善履歴として残すことで継続的改善が見える化。
- 保存ルールの明確化:教育記録や改訂履歴も含め、定められた期間保持。
- KPIの設定:未完了件数、再発率、処理時間をモニタリング。
- マネジメントレビューへの反映:再発傾向や改善遅延を経営層に報告。
よく使う定型文(例文集)
- 「不適合の概要:______________________」
- 「根本原因:________________________」
- 「短期是正措置:______________________」
- 「恒久是正措置:______________________」
- 「効果確認基準:______________________」
- 「完了判定:管理責任者_____/署名_____/日付____」
JIS Q 15001(2023)との整合性
Pマークの是正処置は、以下のJIS要求事項に基づいて運用する必要があります。
| JIS項番 | 要求事項 | 
|---|---|
| 9.2 | 内部監査で不適合を特定し、是正処置を講じること。 | 
| 10.1 | 不適合および是正処置の管理方法を確立すること。 | 
| 10.2 | 継続的改善を実施すること。 | 
これらの記録は、審査時に「改善が実行されている証拠」として必ず確認されます。
まとめ — 是正処置の鍵
是正処置報告書は「書類を作ること」が目的ではありません。
本来の目的は、原因を正しく特定し、再発を防ぐ仕組みを社内に根付かせることです。
内部監査での指摘を単なるチェックではなく「改善のチャンス」と捉え、
継続的に改善を積み重ねることで、Pマークの信頼性と運用品質を高めていきましょう。
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